前回のお話はこちら↓
A先輩の助言で妊娠について意識し始めたものの、まだどこか他人事のようだった私。
次に影響を受けたのは、B先輩との会話だった。
B先輩の場合
B先輩は他部署の2歳年上の先輩で、定期的に業務で関わることがある。
美人でスタイルも良く、クールな印象の持ち主。
最初は近寄りがたい雰囲気もあるが、仲良くなると自然な笑顔を見せてくれる素敵な女性だ。
私が入社した年に結婚し、「子どもが欲しい」とよく話していたのを覚えている。
しかし彼女の部署は国内外への出張が多く、なかなか妊活に取り組むタイミングが難しいのかもしれない、と当時は勝手に思っていた。
その後コロナ禍に突入し、仕事がさらに忙しくなる中で月日が流れていった。
ある日、出社日にB先輩からランチに誘われた。
久しぶりの外食に胸を弾ませていたが、食事が始まってすぐにB先輩は静かに切り出した。
「私、会社を辞めることにしたの」
驚いて言葉が出ない私に、彼女は笑みを浮かべながら話し始めた。
先輩はクスッと笑い、理由を話始めた。
- 約4年間妊活を続けていること
- 病院の検査では夫婦ともに異常は見つからず、原因が不明なこと
- タイミング法や人工授精も試したが妊娠には至らなかったこと
- ステップアップする前に仕事を辞め、環境を変える決意をしたこと
私が「今は仕事の都合で妊活を控えているのだろう」と勝手に解釈していた状況とは全く違い、その話は衝撃だった。
大好きな先輩が退職するという寂しさと、妊活の厳しさ。
その両方の感情が一度に押し寄せ、その日のランチの記憶は今でもぼんやりしている。
それをきっかけに、私の中で妊活への焦りが芽生え始めた。
年齢も近い先輩がこれほど努力している。私はこのままで良いのか?
けれど何も試していないのに焦るのも違う気がするし、
逆にすぐ妊娠したら仕事はどうする?
そんな風に頭の中はぐるぐると迷いでいっぱいになった。
この頃から、家庭内で夫に妊活の話をするようになった。
不妊治療には時間がかかること、治療している人が意外と身近にいるかもしれないこと、
そして私にもその可能性がゼロではないことなどを伝えた。
夫は、「身体は人それぞれなんだから、先輩と比べて焦る必要はないよ」と言ってくれた。
また「不妊治療を受けている人の割合はそこまで多くないんじゃないかな」と
統計的に見た話もしてくれて、私が不安になりすぎないよう冷静に向き合ってくれた。
この言葉は、とても心強かった。
現在、B先輩が会社を退職してから2年以上が経つが、今でも定期的に連絡を取り合い、ランチをする仲だ。
妊活は今も継続中で、ホルモン治療などの影響で体調を崩すこともある中、努力を続けている。